試験直前になると、受験生と保護者から「風邪やインフルエンザが怖くて仕方ないんです」という相談が急増します。ここまで1年間頑張ってきたのに、本番直前で体調を崩したら全てが台無しになる。家族全員マスクをして、外出も最小限にして、神経質に手洗いをして──それでも「もし罹ったらどうしよう」という不安は消えない。
この不安が強くなるのは、ある意味当然のことだと思います。どんなに対策しても、完全に防げる保証はない。満員電車に乗れば感染リスクはあるし、試験会場で隣に座った人が咳をしているかもしれない。コントロールできないことが多すぎて、不安だけが膨らんでいく。
試験直前の高3の生徒の保護者から電話がかかってきたことがあります。「家族が昨日から風邪気味で。本人は今のところ元気なんですけど、うつったらと思うと心配で。家族を別の部屋に隔離したほうがいいですか? それとも、本人をホテルに泊まらせたほうが?」と。かなり切羽詰まった様子でした。
私は、試験直前の風邪・インフル対策は、「できることは限られている」と最初に理解しておくべきだと考えています。完璧に防ごうとすると、逆にストレスが溜まって免疫力が下がる。神経質になりすぎて、勉強に集中できなくなる。それでは本末転倒です。できることをやって、あとは「まあ、何とかなる」と割り切る。そのくらいの心構えのほうが、結果的にはいいと思います。
その保護者には「家族を別の部屋で過ごしてもらうのはいいと思います。でも、ホテルまでは必要ないかと。本人の睡眠環境が変わるほうが、かえって体調を崩すリスクがあります。できる範囲で距離を取って、あとは普通に過ごしてください」と伝えました。
実務的にできることは、実はそんなに多くありません。1つ目は、基本的な手洗い・うがいの徹底。これは当たり前ですが、一番効果的です。2つ目は、睡眠時間を削らないこと。試験直前でも、最低6時間は寝る。睡眠不足が一番免疫力を下げます。3つ目は、部屋の換気と加湿。暖房をつけっぱなしにせず、1時間に1回は窓を開ける。湿度は50〜60%を保つ。
4つ目は、家族の体調管理。受験生本人だけでなく、家族が風邪を引かないように気をつける。もし家族が体調を崩したら、できるだけ別の部屋で過ごしてもらう。ただし、神経質になりすぎる必要はない。同じ家にいる以上、完全に隔離するのは無理です。5つ目は、試験当日の防寒対策。会場が寒いことも暑いこともあるので、脱ぎ着しやすい服装で行く。カイロを持っていく。
逆に、できないこと、やりすぎると逆効果なことも知っておくべきです。1つ目は、人との接触を完全に断つこと。学校にも行かない、塾にも行かない、家から一歩も出ない──これは現実的じゃありません。むしろ、外の空気を吸わず、ずっと家にこもっているほうが、体調を崩しやすい。2つ目は、消毒のしすぎ。手洗いは大事ですが、1日に何十回も消毒液を使うと、手が荒れて逆に細菌が入りやすくなります。
3つ目は、栄養ドリンクやサプリに頼りすぎること。「免疫力アップ」と書かれたサプリを飲んでも、劇的な効果はありません。それより、普通の食事をバランスよく食べるほうがずっといい。4つ目は、試験会場の環境をコントロールしようとすること。隣の人が咳をしていても、席を変えてもらうことはできません。マスクをして、自分の試験に集中する。それしかできません。
それと、万が一試験直前に罹患してしまった場合のことも、頭の片隅に入れておいたほうがいいと思います。共通テストには追試験があります。私立大学も、体調不良で受験できなかった場合の救済措置がある学校もあります。「もし罹ったら全て終わり」ではない。代替手段はある。そう知っているだけで、少し気持ちが楽になります。
実際、去年、共通テスト前日に微熱が出た高3生がいました。本人は「もうダメだ」とパニックになっていましたが、幸い当日の朝には熱が下がって、無事に受験できました。「前日に寝すぎて、ちょっと体がだるかっただけだったみたいです」と。こういうこともあります。少し体調が悪いからといって、すぐに「インフルだ」と決めつける必要はありません。
試験直前の風邪・インフル対策で一番大事なのは、できることをやって、あとは割り切ることです。手洗い、睡眠、換気、加湿。これだけやれば、あとは運です。神経質になりすぎず、普段通りに過ごす。それが、実は一番の予防策だと思います。
当塾では、試験直前期の体調管理も含めて、受験生をサポートしています。不安なときは、いつでも相談してください。






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