受験直前期になると、保護者から「うちの子、最近すごくイライラしていて、どう接していいかわからないんです」という相談をよく受けます。些細なことで怒る、家族に八つ当たりする、話しかけても無視される。「頑張って」と励ましたら「うるさい」と返される。こっちも心配して声をかけているのに、なぜそんな態度を取るのか──高3生や中3生を持つ保護者にとって、直前期の子どもとの距離感は本当に難しい問題です。
子どもがイライラするのは、プレッシャーと不安が限界に達しているからだと思います。本番まであと少し。今まで積み上げてきたものが試される。でも「これで本当に大丈夫なのか」という不安は消えない。焦る気持ちと、どうにもならない現実の間で、心が張り詰めている。そんな状態で、親から「頑張って」「大丈夫?」と声をかけられると、善意だとわかっていても、プレッシャーに感じてしまう。イライラの矛先が家族に向くのは、家が唯一気を抜ける場所だからです。
中3の生徒の保護者から「最近、家で話しかけても返事もしないんです。リビングで勉強してるから『何か食べる?』って聞いても無視されて。こっちも気を使ってるのに、あんな態度取られると腹が立って」と相談がありました。話を聞くと、共通テストまで1週間を切っていて、子どもは毎日ピリピリしている。保護者も「何か力になりたい」と思って声をかけているのに、全部無視される。「もう放っておいたほうがいいんでしょうか」と、疲れた様子でした。
私は、直前期のイライラは当然のことだと考えています。1年間、あるいはもっと長い期間頑張ってきて、それが全部この1日、2日で決まる。そのプレッシャーは、経験した人じゃないとわからない。だから、親としてできることは、イライラを受け止めることじゃなくて、できるだけ刺激しないことです。声をかけたい気持ちはわかる。でも、今の時期は「何も言わない」ことが一番の支えになります。
その保護者には「今は、話しかけられること自体がストレスになってると思います。『何か食べる?』じゃなくて、黙って置いておく。返事がなくても気にしない。無視されても怒らない。あと1週間だけ、我慢してもらえませんか」と伝えました。正直、親としては寂しいし、理不尽に感じると思います。でも、この時期の子どもは、それだけ追い詰められている。親が我慢することで、子どもは少し楽になります。
ただ、明らかに様子がおかしい場合は別です。ご飯を全く食べない、一睡もしていない、自分を責め続けている。そういうときは、無理に放っておかずに、一度ちゃんと話を聞いたほうがいい。「辛かったら、話してもいいよ」と。押し付けるんじゃなくて、逃げ道を作ってあげる。
親として一番辛いのは、「何もしてあげられない」と感じることだと思います。でも、実は親がいつも通り家にいて、いつも通りご飯を作って、いつも通り生活している。それだけで、子どもは安心しています。特別なことをする必要はない。むしろ、特別扱いしないことのほうが、子どもにとっては楽なんです。
直前期の子どものイライラは、親のせいでも、子どもが悪いわけでもありません。ただ、受験というプレッシャーが、そうさせているだけです。あと少しの辛抱です。本番が終われば、また普通に話せる日が来ます。今は、少し距離を置いて、静かに見守ってあげてください。
当塾では、受験生本人だけでなく、保護者の方の不安にも寄り添いながらサポートしています。辛いときは、いつでも相談してください。





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